プロ野球 男道!

日本プロ野球界に生息する『おとこまえ』を発掘し、賞味するBlogです。
また、男を下げた選手を容赦なくムチ打つBlogでもあります。
癒すおとこ、癒されるわたくし 北川博敏
今回は少し「おとこまえ」から横道に逸れるかもしれません。

昨日(2005年6月4日)広島市民球場で、広島対オリックスの試合が行われました。オリックス3-0広島で迎えた8回裏の広島の攻撃中のことでした。先発のJPから代わったばかりの加藤が浅井にタイムリーを打たれた後、次の打者木村拓が打席に入る直前、ベンチから仰木監督が出てまいりました。そして場内に投手交代が告げられました。しかし、木村拓はスイッチヒッターです。投手交代する意図が分かりません。それはマウンドの加藤も同じでした。たしかにタイムリーを許しましたが、点差は2点あります。

しかし、最も驚いたのは仰木監督本人だったそうです。
監督は浅井への3球目がストライクだったのではないか、と確認しただけだと主張なさっています。一方応対した土山球審(セ)は「確かに菊地原と聞いた」との主張を繰り返しています。試合は44分間中断し、昨年日本シリーズの長時間試合中断の失態の反省を活かせないまま、同じ徹を踏むはめになったのでございました。

ことの顛末はみなさまご存知のとおり、仰木監督が「遅延行為」のため退場なさることで一応解決はいたしました。しかし、遅延行為は5分で認められ、即刻退場を言い渡せるとのことでございます。ことの確認作業、審判の協議、監督への説得等を含めても、44分はあまりに長過ぎますし、その間詳細な説明もなく観客を待たせたことも失態であり(上本球審…でしたか、簡単な事情説明がありましたが、遅すぎた上不十分でした)、深く反省していただきとう存じますが、その話は本日の主題ではございません。

試合中断の間、当然観客から不満がわき起こります。それほど騒然とした感じではございませんでしたが、TV観戦していたわたくしでさえ、イライラし始めておりましたので、現場におられた方々の心中察するにあまりあるほどでございました。
そんな中、1塁の守備についていた北川が内野席にボールを投げ入れるシーンが映し出されました。1塁側のファン(広島ファンですが)が沸きました。今度は白い歯を見せて「北川スマイル」を見せる彼の顔がアップで映し出されました。はにかんだように笑いながら、なおもボールを投げ入れておりました。
それを見てのことか、広島ベンチからも選手が出てきてサインをサービスしたり、内野席のファンとフェンス越しにキャッチボールを始めたりと、にわかにファンサービスが始まったのでした。

わたくしは中断中ずっとTVの前にいたわけではございませんので、それらのファンサービスが北川の行為に端を発したものなのか分かりませんが、あのときにアップにされた彼の笑顔は、その人柄にカメラマンすら魅了されたことの証左ではないでしょうか。それまでヤジをとばしていたファンからも歓声が上がり始め、和やかとすら言える雰囲気で時間が過ぎてゆきました。

北川の人柄の良さについての証言は数多くございます。彼は兵庫県伊丹市出身で中学生の頃まではその地で暮らしておりましたが、お父さまの転勤で埼玉へ移住します。本来ならお父さまが単身赴任をなさることになっていたそうですが、北川少年が離れて暮らしたくないと泣きながら懇願して、家族で引っ越しをされたということでございます。それほどまで家族の絆が強い環境で育ったのであれば、あの笑顔の屈託のなさも納得できようというものです。

1995年ドラフト2位で入団した阪神では、6年の在籍期間中ほとんど活躍の場がございませんでした。しかし、2001年に移籍した近鉄ではかの有名な「代打逆転サヨナラ満塁本塁打」というSHINJOもびっくりの一大事をしでかし、みるみるスタメンの座を手に入れたのでした。
移籍先で今まで考えられなかったような、目を見張る活躍をする選手がときどき見られますが、北川の場合、甲子園球場という特異な空間にも原因があったのではないかと、冗談半分に推測するのでございます。

甲子園球場には魔物が棲むと申しますが、これは単に比喩ではなく、本当に無形の「なにか」がいるのではないかと感じることがございます。あれだけ多くの、同じ嗜好と意志と念を持った人間が集まり、気を高める儀式(応援歌の合唱、風船飛ばし)まで行う場所です。さまざまな念が立ちこめては渦巻く場なのでございます。(だからこそ裏鬼門に当たる南西の方角にすさのお神社がましますのです。)
そのような場で、根が純粋な北川がのびのびとプレイできるはずもございません。なにも阪神でのびのびプレイしている選手が純粋ではないと申しているのではなく、彼が「やさしすぎる」「繊細すぎる」性質の持ち主であると言いたいのです。

ですが本人曰く、
「近鉄の雰囲気? 悪い言い方かもしれないんですけど、適当なんですよ。いい言い方をしたら……いい言い方をしても適当ですね(笑)。野球が適当だとかじゃないんですけど、なんか雰囲気が適当なんですよ。だから気楽に野球ができます」←週刊ベースボール2004年10月18日号より

だそうです。

冗談はさておき、昨年合併の発表から1週間後の6月22日、北川は8回裏に逆転打を放ってお立ち台に立ちました。
マイクを向けられて、北川はこう応えた。ぼくは近鉄へ来てから、みんなの前でプレーできるようになりました。勝つことでしかぼくらは抵抗できないけど、プレーオフに出て、日本一になりたい−。
そして、ドームに来てくれたファンに一言、と言われて、抑えていた感情が、一気に噴き出した。
「あのとき、逆転したあと、このまま言ったら俺がヒーローインタビューやな、嫌やなあって、ずっと思ってたんです。ファンの前で喋ったら、絶対に泣いてしまうでって……、そうしたら、ほんまに」
お立ち台で滂沱の涙を見せてしまった。←Number 2004年11月11日号より

涙もろい人というのは、感受性が繊細で、人の痛みにも敏感なのでしょう。年をとると涙もろくなるのは、さまざまな経験を経て、人が置かれ得るあらゆる立場を理解し、実感できる能力が発達するからだと存じます。
北川の笑顔には子供の頃に培ったのか、生まれながらにして持ち得たのか、人の痛みに対する思いやりの心が伝わってくる暖かさがございます。癒し、という系が本当に存在するとしたら、彼はその最右翼と言えるでしょう。

北川博敏という、癒しの「場」を体験するためだけでも、今年はオリックスの試合に足を運ぶ甲斐があるのかもしれません。
| 鳴尾浜小町 | オリックスバファローズ | 22:20 | comments(2) | trackbacks(1) |

コメント
北川が一塁の内野席へ…。いいシーンですね。このシチュエーションは新庄ではダメで、北川は逆に○○レンジャーをやってもダメですね(笑)。演出なしで自然と滲み出してきた人柄でしょうね。本当にいい情景ですね。目に浮かぶようです。
| BSミツルH | 2005/06/10 5:06 PM |
BSミツルHさま
ええ、ええ、本当にいい光景でございました。

>このシチュエーションは新庄ではダメで、北川は逆に○○レンジャーをやってもダメですね

わたくしもそう思います。ふたりとも自分をよく理解していると言いますか、自分に与えられた役割を演じる術を心得ていると思います。これは彼らに「自信」と「プライド」がしっかりと備わっているからなのでしょうね。
| 鳴尾浜小町 | 2005/06/11 8:04 PM |
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