プロ野球　男道！

2005年8月28日の試合はすべてのマリーンズファンにとって、今季のベストゲームというにふさわしい試合でしょう。
ロッテは今季、奇跡とも言える快進撃でプレーオフに向けて驀進してまいりました。優秀な投手陣、好調の打撃陣で出来過ぎとも言えるような活躍ぶりでございます。中でも堅固な先発投手陣はちょっとやそっとではくずれそうにありません。ジョニーの戻るべき場所はあるのか……。

そこへ突如“ジョニー復帰”の報が入りました。しかも、ホークスとのゲーム差4.0で一戦も落とせないというデリケートな状況でです。
当日（8/28）は奇しくもそのホークスがデーゲームで日ハム戦に敗れ、方やマリーンズはプレーオフマジック1で、あと一勝でプレーオフ進出決定という大事な大事な試合となりました。お膳立てはすべて整ったわけでございます。あとはジョニーで勝つのみ……。

マリスタは28,918人の観客が集まりました。今季最多だそうです。そのほとんどがジョニーの復帰を心から喜ぶファンでございます。ライトスタンドはもちろん、レフトスタンドも半分ほどマリーンズファンで埋め尽くされていたそうです。
そんな中、黒木はマウンドに立ちました。深々と頭を下げて。オリックスの先頭打者・迎への第一球はストライクでしたが、スタンドから歓声が上がりました。どれほどこの瞬間を待っていたことか。典型的なにわかファンのわたくしには容易に想像のつくものではございません。自然と、失われた黒木の452日に思いを馳せるのでした。

昨季契約更改時に、球団の提示額から自らさらなる減額を申し出て、背水の陣で臨んだ今季でした。1軍の先発陣が好調なため、つい忘れがちではありましたが、バレンタイン監督は辛抱強くジョニーの完全復帰を待ち望んでいたのでございましょう。そのタイミング、まさに計ったかのような、あるいはあらかじめ用意されていたシナリオのような見事な復活劇でございました。

そしてなにより、その黒木を支えた野手も素晴らしゅうございました。明らかに硬くなっていた今江の守備、暴投を捕り損ねた里崎の黒木へのいたわりの態度、福浦のタイムリーにサブロー，イ・スンヨプ、里崎の本塁打……全員が黒木に勝たせるために、ただひたすらそれだけのための戦いを見せました。
中でも、黒木からバトンを受け継いだ藤田の投球は、まるで黒木の魂が乗り移ったかのような熱いものを感じさせるものでした。相変わらず小林雅がもたつきはしましたが……。

もっとも印象に残ったのは、ベンチに戻ってきた黒木を迎えた初芝の笑顔でございました。まるで自分のことのように喜ぶ初芝。マリーンズのすべての選手がジョニーのためにある、そう思わせる一夜でございました。

勝利の決まった瞬間、黒木ははじけるような笑顔を見せました。先発を言い渡されてから夜も眠れなかったという彼は、この瞬間真のヒーローになったのでございます。

「なんと言ったらいいのかわからない」
ヒーローインタビューでの第一声です。そうでございましょう。何も言わずともこの日の投球がすべてを物語っています。
終わってみれば、6 2/3回、89球、7被安打、失点・自責点0でございます。降板時にはマリスタのぐるりからスタンディングオヴェーションが起こりました。

ホークスとのゲーム差は3.0です。明日からの直接対決は敵地・ヤフードームでのゲームでございますが、昨日のファンの声援を背負ったマリーンズナインが負ける気がしないのは、わたくしだけでございましょうか。