2005.04.08 Friday
アンディ・シーツに見る大和魂 |
広島時代のアンディ・シーツという選手に対して、わたくしが持っていた印象とは「神経質そう」「気が短そう」「プライドが人一倍高そう」そして「阪神にとって(他球団にとっても)イヤな存在」というものでした。さらに、タイガースのチームカラーには合いそうもない外人選手とも思っておりました。
その男が2004年オフ、こともあろうか阪神タイガースに移籍してきたではありませんか。しかも阪神ではダブつき気味の内野手としてです。鳥谷ショート固定構想が早くも崩れたかとも思いました。 ですが、記事には意外なことが書かれていました。
「シーツの守備位置は1塁」
ファースト? あの華麗な遊撃手が1塁? 実に意外でございました。「プライドが人一倍高そう」なシーツがこれを普通に受け入れるのでしょうか。しかし、タイガースとの契約交渉でこの話はシーツに伝わっているはずです。ということは、シーツは「守備1塁」を受け入れたということになります。ここでわたくしの「プライドが高そう」という印象が偏見であることが明らかになりました。 さらにこのような記事が出ました。 シーツ「手本は金本」 18年ぶりのV導いた“つなぎ”継承←スポニチアネックス大阪の記事より 「自分も金本サンや今岡につなげられたら…。そういうバッティングをしていきたい」 まだこの時点では、外人選手にありがちなリップサービスと思っていた面もございました。チーム、チームと言っていても所詮自分の成績が気になるのは人情ですし、また、数字には表れないチームへの貢献を球団が適切に評価してくれないことに対する不信感もございましょう。ですから個人成績を重視する気持ちはよく分かります。 たとえリップサービスであっても、チームのため、チームのためと言っておけば印象はよくなります。ですが、本心からそう思っているのかどうかは、試合が始まれば分かってしまうものでございます。 開幕からのシーツの活躍はみなさんよくご存知でしょう。初陣こそ無安打でございましたが、それ以降は毎試合マルチヒットで4/7現在打率は0.522でございます。もちろん自身も意識してはいるでしょうが、それ以上に、試合中に見るシーツの表情がリラックスしていて、チームに溶け込んでおり、楽しそうなのです。とても「神経質そう」には見えません。ここでまた、第一印象が偏見であったことが分かりました。 また彼は「個人成績よりチームの勝利」を実行して見せております。4月3日に行われたヤクルト戦でのことです。4回裏、その回の表に1点追加されて5-1と引き離された阪神の攻撃で、先頭打者スペンサーがソロホームランを打つと、それをきっかけに猛攻が始まります。極めつけはシーツの3ランでございました。その回になんと6得点を挙げて阪神が逆転に成功いたします。あのときのシーツはまさに神々しく見えたものでございます。 ここぞというところで本領を発揮する男。かような男には牽引力がございます。 守備でもチームに貢献いたします。1塁手でありながら2塁手や遊撃手のようなボールさばき。もちろん彼自身遊撃手出身でございますから、当然そのような守備になるのでありましょうが、あらかじめ小振りのグラブを用意するなどして「守備範囲の広い1塁手」を目指していた感もございます。 なんと「おとこまえ」なのでしょう。 では、「気が短そう」という印象はどうなのでしょうか。オープン戦での死球事件に見られるように、彼は弱点である内角を執拗に攻められます。死球はその最も極端な例ですが、たしかにきわどいボールはいくつかございました。内心穏やかではなかったことでしょう。 その怒りは4/6の対広島戦で噴出いたします。1塁にシーツをおいて今岡が長打コースにヒットを放ちます。シーツは、多少強引かなとも思いましたが、走れのサインが出ていたのでしょう、本塁に向かって爆走いたしました。本塁の前では、広島の捕手の倉がバックホームの捕球体勢で待ち構えております。シーツも勢いが止まりません。果敢に突っ込んで倉にタックルをかけたのでした。しかし、倉もおとこでございました。倒れ込みながらもボールを離さず、判定は「アウト」。 達川氏の解説によれば、シーツの頭の中では執拗なインコース攻めに対する怒りが、それを指示した捕手に向けられていたのではないかということでございます。 わたくしは見ていてスライディングができるタイミングではなかったと、記憶しております。どのみち捕手のブロックを受けてアウトになりそうな感じでございました。ですが、達川氏のおっしゃるとおり、怒りがなければあの果敢なプレイはなかったのかもしれません。現に肘が入っておりましたから……。 死球を受けて奮い立たない選手はないでしょう。わざと当たりにいった場合は別ですが。昨季、桧山が頭部に死球を受けたのを見て、ネクストにいたアリアスが怒っていたくらいです。 件のクロスプレーの後もシーツは打点を挙げるなど、安定した活躍を見せてくれました。ちなみに倉は数イニングマスクをかぶった後、木村一と交替しております。 「気が短い」というよりは、怒りを上手くプレーの中で昇華できるタイプのようでございます。 以上のような彼の性質は、古き良き時代の日本男児を彷彿とさせます。タイトルに「大和魂」とつけたのも、わたくしがシーツに「それ」を見たからにほかなりません。 最後の「阪神にとってイヤな存在」は、当然阪神の一員になった時点で「頼もしい存在」に変貌いたしました。 キャンプやオープン戦等でシーツの評価が高まりつつあった頃、わたくしはなおも彼の評価を保留しておりました。プレーヤーとしての実績は当然分かっておりましたし、そう大きく崩れるタイプではないことも理解しておりました。要は、「おとこまえ」であるか否か……がわたくしの場合、最も重要なのでございます。 ですが、ここに胸を張って「おとこまえ認定」をいたしたく存じます。 アンディ・シーツはおとこまえ、でございます。 |