プロ野球 男道!

日本プロ野球界に生息する『おとこまえ』を発掘し、賞味するBlogです。
また、男を下げた選手を容赦なくムチ打つBlogでもあります。
男はいかに戦うかー川上憲伸の場合
男ならぬ身のわたくしには、表題のような問いに的確に答えることなどできません。なお、表題は「いかに戦うべきか」ではなく「いかに戦うか」であって、理想の戦い方云々について語るものではございません。現に男がどのように戦っているのか、男の戦い方にはどのようなものがあるのかについて、わたくしが思うところ、感じるところを綴ってみたものでございます。
人が戦う理由は千差万別、さまざまございます。ある人は障害となるものを倒すため、ある人は何かを守るため、そしてある人は何かを越えるため。女も戦うことがあると言いましても、女と男では戦う姿勢のようなものが明らかに違うと思います。それはそのまま男と女の差異と言ってもよいような気がいたします。

スポーツには競い合うという性質があります。レース形式、ゲーム形式、マッチ形式……さまざまな形式で他者と優劣を競い合うことが基本にございます。中でも野球は対立の構造がはっきりしていて、戦いというものを考える上でよりエッセンスを取り出しやすいと言えるでしょう。テニスやサッカーは、彼此が人数、役割その他あらゆる意味に置いて対等です。ですがこと野球はと言いますと、攻守交代しながら戦うので片や球を投げ、片や打棒でもって打ち返す、という具合に対立構造が非対称です。すなわち、投手と打者では立場、戦い方が自ずと違ってきますし、対立の瞬間における心理の動きなども決して同じではございません。

川上憲伸という投手がいます。わたくしの大好きな選手でございますが、なぜかように彼に惹かれるかはこの際置いておいて、なるべく美化することなく、過剰に擁護することなく書き進めてまいりたいと存じます。
いつコロぶか分かったものではございませんが。

憲伸の性格のひとつに「負けず嫌い」というのが挙げられます。投手には右投げの投手、左投げの投手がいて、それぞれ求められるものが多少なりとも違います。そこで各チームに「右のエース」「左のエース」と、それぞれがエースと呼ばれることになるのですが、憲伸にとっては「真のエースに右も左もない、たったひとりで充分」だということになります。自分が「右のエース」と呼ばれることに対する一種の抵抗でございましょう。右で投げようが左で投げようが、最も勝てる投手、それがエースだろう、ということです。
それはなにも「オレが真のエースだ」という叫びではなく、「真のエースの座」をたったひとつに設定し、そこにかならず自分が座ってみせるという宣言にほかなりません。逆に言えば、そうとでも思わなければ頑張れない、気持ちが途絶えてしまうことが分かっているのかもしれません。

では、何に負けたくないのでしょうか。単純に考えますと、チームメイトの投手に負けたくないということが挙げられるでしょう。

憲伸の特徴は「巨人戦で異様に燃える」ことです。かつて巨人キラーと呼ばれた投手は何人かいましたが、彼らの共通点はいづれも対巨人戦において特に闘争心をむき出しにして立ち向かった、ということでしょう。憲伸にも同じことが言えます。巨人という、まさに巨大な壁を打ち砕くことにこそ、戦う意味を見いだしているのです。ですから、憲伸の闘争心を維持しようと思ったら、「強い巨人」を維持しなければならないのです。
昨年、日本シリーズ第一戦で登板した憲伸は、相手の西武の先発が松坂ではなかったことに、少なからずショックを受けたようでございます。
「アイツ(憲伸)、『松坂じゃないのか』とブルペンで2度も口にしたものな」(森投手コーチ談)
代わりに投げた石井貴では憲伸にとって役不足、というわけでもなかったのでしょうが、投げ合う相手がエースではないという事実が彼の闘争心を多少なりとも萎えさせた可能性はあります。結果は中日が大事な一戦目を落としてしまうことになりました。

ついでに申し上げますと、憲伸は第5戦で再び先発いたしますが、この試合は彼の中で絶対に勝たなければならない試合でございました。日本シリーズは短期決戦ですので、落としてもよい試合があるというわけではありませんが、彼はすでに1戦目を落としてしまっていたのです。すなわち、「落とし前」をつけなければならなかったのです。その気合いは投球内容にも見事に反映されており、6回1/3までパーフェクトピッチングでした。ここで細川にヒットを許しますが、そこからの方が憲伸の闘争心がむき出しになった観がございます。その容貌は鬼神が憑いたごとく、全身からは気焔が立ち上るかのごとく…。いえ、大げさではなく本当に。
正直申しまして、それまでわたくしは川上憲伸という投手を舐めていたところがあったのです。どんなに勝ち星を挙げて他球団をきりきり舞いさせていたとはいえ、阪神ファンという立場から敵のエースを見る程度のイメージしかなかったのですが、この日マウンドに立った憲伸は人を惹き付けながら決して近づけはしない、そんなオーラのようなものが感じられました。

強いものに勝ちたい、弱いものをねじ伏せても意味がない。そんな憲伸だからこそ2002年に達成したノーヒットノーランは巨人が相手だったのです。しかも敵地東京ドームです。

誤解を恐れずに言いますと、彼はチームの勝利などどうでもよいのではないでしょうか。それはチームが負けても自分が勝てばよい、という意味ではなく、自分が勝てばチームも勝ち上がってくるはずだと考えているのでしょう。それは一種の気負いです。その気負いこそが彼を支えているのであり、それによってチームを勝利に導くことができるという彼の信念なのです。

2005年4月8日に対巨人戦で本塁打を含めて6失点を喫した試合の後いったんファームに落ち、再び先発投手として登板した4月22日、奇しくも巨人戦、清原の500号本塁打まであと1本に迫った試合だったというのは、偶然ではないような気がして仕方がございません。8回で降板が決まっていたにもかかわらず、9回に打席が回ってきた清原と対決したいと自ら申し出て、見事に清原の本塁打を打ち砕きます。ただ、この時点で巨人はリーグ5位。憲伸にとっても消化不良気味の対決だったのではないでしょうか。

大事な局面でフォークボールで挑んだ藤川ー矢野のバッテリーに、直球勝負を望んだ清原は罵倒を浴びせました。翌日、憲伸との対決で今度は憲伸の気合いを讃え、素直に負けを認めたと言います。彼にどのような意図があったのか分かりませんが、最初の罵倒が憲伸の闘志に火をつけた可能性も否定できないように思います。なら、俺が直球勝負をしてやろう、と。
憲伸は勝負師ではありますが、無謀ではございません。最終打席までは打ち取る方向でピッチングを行っておりました。真に勝負に出たのは最終打席のみでした。おそらく最初からそのつもりであったと思われます。仮に打たれたとしても、勝敗に影響しないようにと直前の高橋由をアウトにしておくという慎重ぶりです。女房役の谷繁もすべて直球を確信しました。
勝負の場面を自らお膳立てして、演出することができるという時点でこの勝負、ついたも同然だったのす。ところがその後ローズに二塁打、小久保に四球を与えるなどして岩瀬にマウンドを譲りましたがこれはご愛嬌です。よほど直前の勝負で消耗したのか、気が抜けてしまったのでしょう。もうこうなったら微笑ましいとすら思えてまいります。

憲伸は、ばったばったと敵をなぎ倒して行くような戦い方はいたしません。その戦い方は己より強いものを力でねじ伏せることで満足感を得る、そういう戦い方でございます。ですから、己自身が頂点に立ったときにすべての戦いが終わり、その先に待つ凋落は見るも無惨なものかもしれません。しかし、たとえそのようになったところで彼は「もう、することがないなあ」と言って笑っているだけのような気がいたします。

「巨人戦の場合はマウンドにほとんど行かなかった。逆にいえば、マウンドに行かないでも、自分でその場面をなんとか切り抜けてくれるんじゃないかっていう思いもあったね。巨人戦以外のほうがかえってマウンドに行ったな。(気が)抜けてるから。巨人戦みたいな投球をほかのチームにもやれっていうんだけどね(笑)」←山田久志前中日監督談(月刊「バーサス」2005年5月号より)
| 鳴尾浜小町 | 中日ドラゴンズ | 15:18 | comments(0) | trackbacks(8) |

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